時は1980年代後半の或る夏の日
東京下町台東区において、A小学校5年のキッド VS T小学校6年のトシちゃんとの死闘は幕を閉じた・・

半年後
冷え冷えする2月の末、或る日の放課後の事

チキは、相変わらず浅草の千束にあるおもちゃ屋兼ゲームセンター【コユキヤ玩具店※】で、トシちゃんと共に、㈱カプコン(CAPCON)が誇る横型アクションゲームの金字塔【ファイナルファイト】に興じていた。
※以下・コユキヤ

おっと
登場人物など、おさらいの意味を含めて、後世 浅草千束【夏の陣】と誰も呼んでいない勝利も敗北もオチすらない少年同士のどうしようもないバトルの行方を、先ずは再確認してみて欲しい

中学校は私立を目指していたチキ

受験した私立中学校に悉く惨敗し、地元の台東区立A中学校(蔵前中学校×福井中学校が合併)に進学することになるのだが、通っていた塾※もLike a消化試合の体となり、再びコユキヤ遊びに拍車がかかっていたのだ。

トシちゃんチキの母校・T小学校
キッド達の母校・A小学校

他にも
ゴールデンドラゴン(金の龍)達が集うK小学校、こち亀の主人公【両津勘吉】の母校でもありの浅草っ子達をねる運命(さだめ)を背負っているS小学校、Waiting ForミルキーマウンテンことM小学校、浅草のMt.FujiことF小学校など‥

コユキヤには近隣から多くの小学校の生徒が集まってきたので、良くも悪くも突発的なエンカウントバトルが巻き起こったのは、先の【夏の陣】でも立証済みであろう。
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(今はアーケードも整理されお洒落な商店街へクラスチェンジ)

【冬の陣】を彩るのは、M小学校の6年生で通っていた塾のクラスメートだったGくん

先生に指されたり、何かを持ち上げたりすると、体(特に顔)がうすピンク色に染まる色白Body

くまのプーさんの様に身も心もおおらかで、いつもニコニコしてて、その風貌から男女問わず安心感と人気があって

トークに自信あり!の子供が何よりも目立つ下町エリアの小学生達の世界で、ごく稀にスマッシュヒットする雑学混じりのユーモアセンス

決して怒ることはなかったのだが、ブチ切れたらそんじょそこらの大人でも止められないんじゃないか?と思われるほど屈強なボディ

そう。
ファイナルファイトの主人公の一人、マッドシティの市長【マイク・ハガー】の様なナイスガイな少年だった

そのままのイントネーションでゴマちゃんと言いたい気持ちをグッと抑え、彼の名字を逆読みしてイゴちゃんと呼ばせてもらうこととしよう
イゴちゃんと出会った塾とは、今は閉校してしまっている下町の学習塾【島本時習塾】※以下・島本

1912年創業
最も古い(歴史ある)私塾としてギネス認定されており、浅草の人間なら誰でも知っていた名門学習塾・島本の5,6年時のクラスメートだった

当時は江戸通りの駒形橋付近にある駒形校と、東武線浅草駅(松屋)と隅田公園の間にある吾妻橋校があった。

クラス編成と言うと

駒形校舎
普通クラス(2教科・4教科)→青銅聖闘士
二特(2教科・4教科)→白銀聖闘士

吾妻橋校舎(聖域サンクチュアリ)
一特(2教科)→黄金聖闘士
一特(4教科)→黄金聖闘士(教皇・沙織さんレベルも存在)

普通クラスの生徒達は、浅草の商売人の子供が多く、ほとんどが地元の公立中学へ進む予定で、いわば【手習い】

一特は早稲田・慶応クラスにバンバン合格者を送り込む黄金聖闘士(エリート戦士)達が集い

因みに、2教科は受験の縛りが国語・算数が多い女子校向けの女子クラスで、4教科は社会・理科を加えた男子メイン(女子は少数)と言った感じで

チキイゴちゃんが所属していたのは、4教科二特。
トシちゃんは4教科普通クラス

学力は中の上〜上の下が集う、いわば白銀聖闘士達のクラスであった(笑)

『あ〜。島本の駒形教室とかセピア色の思い出が完全に蘇ってきたわ。島本のこと書きて〜』という気持ちをグッと抑え、話を本筋に戻すこととする
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(国道6号線・通称[江戸通り]の光景。真ん中の茶色のビルにかつて島本が入っていた)
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(ファイナルファイトにハマったどストライク世代が我々)

 『俺、ワンコイン(50円)で、ファイナルファイ  
  ト超せるよ。


土曜特勉(島本での土曜授業の呼称)での休み時間

クラスメイト達と他愛のない話をしていた最中、ファイナルファイトに話が及ぶと不意にカットインしてきたイゴちゃん

超せるとは我々の地域でクリア出来るという事と同意語だった。

時間かかるから、パンチ嵌め※はNG

 待ってる人いたら揉める元だし、何より点が稼げ
 ないから(笑)


ゲーム機に右端or左端にコインを置いて、『我こそは次のプレイヤーなり!』と高らかに宣言(マーキング)していたのたが、その次回の挑戦者達への配慮を忘れない、中々紳士なイゴちゃん

当時、チキはもちろん他の少年達もワンコインクリアはおろか、2面のBOSS(ソドム)になぶり○されるのがデフォだったので、イゴちゃんの姿が光り輝いて見えたのは言及の必要ないだろう

取り急ぎ、ファイナルファイトを思い出したい方や、やった事ない・ご存知ない方は下記の【ymac fc3s】さんの激ウマプレイ動画をご覧になって頂きたく
 
※パンチ嵌めとはコーディとガイが使う外道テクニック
(上記YOUTUBE 11:25あたり御参照のこと)

相手にパンチを数発入れてから逆方向にパンチを入れ、また相手にパンチを入れるという究極技

余談だが、この逆パンチを入れる際、レバーと一緒にリズミカルに動いちゃう少年が多発し、遠目で見ていると滑稽な光景でもあった‥


そんなこんなで、小学生生活もあと僅かな2月の末の事

おっ!いたんだ〜

コユキヤで遊んでいたチキトシちゃんが声がしたほうを見ると、ニコニコしながら手をあげるイゴちゃんが立っていた。

希望の進路には行けず、公立の中学への進学が決まっていたので、島本を無事に卒業(単に来てなかっただけかもしれないが)していたイゴちゃんコユキヤで会えたことがやけに嬉しかった

その姿は、島本でもよく来ていた服同様、Tシャツの上にGジャンを羽織いズボンはケミカルウォッシュ、冬でも半ズボンだった
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(UNIQLOとCAPCOMがタイアップしたTシャツを一目惚れして即買い(笑) 今でもすごく好き)

当時のアーケードゲームは難易度や1UP点数等を各店で設定出来る仕様となっていたっぽかったが、ユキヤの設定は結構な塩対応だったと記憶している(笑)

こと、ファイナルファイトについて言えば他店が100.000点を取ると1UPしていたのに、コユキヤは永遠に1UPしない仕様だった。

まあ、これは人気店であるがゆえに、誰かが長くプレイせずに、みんなが出来るように敢えて高難度を設定したコユキヤの優しさと思っているので、回転率を高める為とか大人の事情とか勘ぐる向きは自制のほど、よろしくメカドック(笑)

2面のボスを辛勝で倒し、ボーナスステージを終え、3面突入後、劣勢に立たされ、アンドレが3体出てくる闇プロレス会場(上記15:50~)で散ってしまった、ハガー使いのチキ

ガイ使いのトシちゃんも3体のアンドレ(2人プレイだと3体。ちなみに1人プレイではアンドレ2体)に囲まれ苦しい状況と知るや、

助太刀いたす

いぶし銀な古武士の様な言葉と共に、持っていた50円を投入

まだ消えていないチキのクレジットをコンティニューして、ハガーとして颯爽と登場したイゴちゃんの背中が、出てきたキャラクターが点滅している一定時間無敵状態である状態の時が如く、神々しく光って(点滅)いるようだった

しかし、そこで事件は起こった‥
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(アンドレに囲まれた時の絶望感といったら‥)

同世代の皆さんなら幼少期、似たような経験があるのではなかろうか?

ファミコンをやっていて、敵味方問わず画面上にキャラがいっぱい出てくると動きがとてつもなくSlowlyになり、ほぼ操作不能になる謂わば【16ビットの限界】状態を‥

アーケードとは言え
今をときめくCAPCOM製とは言え、そこは昭和60年代初頭の事

自称ワンコイン超えのイゴちゃん、あろうことか身動き出来ない状態となり、アンドレのネックハンギングツリーで瞬殺されてしまったのである‥

気を取り直す(多分)イゴちゃん

次こそはと出てきた刹那、やはり立ちはだかる16ビットの壁‥

アンドレのリーチの長いパンチから、掴まれて高高度のパイルドライバーを喰らい瀕死のイゴちゃん操作のハガーを続けざまに悲劇が襲う‥

『おいごと刺せ〜』

池田屋事件の薩摩藩士・有馬新七が如くイゴちゃんが言ったかどうかは定かではない。

雑兵と思っていた、その日限定の一瞬のパートナー・ガイを使っているトシちゃんが振りかざしたポン刀(日本刀)が、アンドレ共々ハガーを直撃

アーケード版ファイナルファイトでは、パンチはもとより武器を振りかざす際、仲間も敵と一緒に叩ける仕様となっているのだ‥

散るハガー‥…

メガネ越しに、その一部始終を見るイゴちゃんの目

それは後に『ドーハの悲劇』と呼ばれることとなるFIFAワールドカップアメリカ大会のアジア最終予選の日本VSイラク戦

2-1とリードしていた試合終了直前、ゴールに吸い込まれるイラク選手のヘディングシュートの行方を見ていた、サッカー日本代表選手達及び多くのサポーター達のそれに似ていた‥


ワンコインで超せるイゴちゃん
パンチ嵌めはしないイゴちゃん
点稼ぎがモットーのイゴちゃん

得意げに鼻の穴を広げながら話していたイゴちゃんと、助太刀のすの字も活躍ができず一瞬で散っていき茫然自失と立ちつくすイゴちゃんが、同一人物とは到底思えなかった‥
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(向かって左がガイ(GUY)。真ん中がコーディ(CODY)右が我らがハガー(HAGGAR))

少し遅れてトシちゃん操るガイもアンドレにやられて終了〜

ドラゴンボールで言えばチャパ王、パンプット、ナメック星でのキュイ

聖闘士星矢で言えば、ウルフの那智、蟹座のデスマスク

キャプテン翼で言えば難波FCの中西君など

大口を叩いた割に実力不足‥もとい、本領を発揮出きず一瞬で退場していった数多のキャラ達‥‥

少年ジャンプで多くを学んでいたはずのチキ
特にイキッた訳でもなく当時のアーケードゲームが織りなす不可抗力の末の惨敗とはいえ、結果的に上記のキャラ達と同じ様に瞬殺されてしまった目の前のイゴちゃんにかける言葉が見当たらなかった・・・

イ、イゴちゃん‥』

弱々しくそう声をかけたチキに向かい、

『ガイ使いなんだ、本当はオレ(笑)』

と、ドーハっぽい目をしたまま、無理やり作った引きつり笑顔のまま、足早に店外へむかい自転車に跨るイゴちゃん・・

寒かった気候がそうさせたのだろうか?

イキっちゃった手前、えも言えぬ羞恥心がそうさせたのだろうか?
単にズボンのサイズがパツンパツンだったからであろうか?
それとも自転車に圧迫されていたからであろうか?

今となっては、理由か定かではないのだが、

自転車に乗り混んだイゴちゃんのケミカルウォッシュの半ズボン越しに見える白い太腿が、ピンク色に紅潮していた‥

コユキヤから帰る道すがら

別々の未来へと船出するイゴちゃんとはこれで最後かもしれない……という哀愁よりも、かつて【まんが日本昔話】で見た「キジも鳴かずば撃たれまい」という切ない教訓と、イゴちゃんのピンク色に紅潮したケミカルウォッシュ越しに見えた太腿が強く印象に残っていた‥
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(ああ無情‥かつてコユキヤがあった辺り。時の流れの儚さよ)

数カ月後〜

台東区立A中学校の入学式にはチキトシちゃんの他に、別の公立中学校に進学するエリアに住む‌イゴちゃんの姿があった

上級生は存在したまま、この年に近隣の2つの中学校が合併し、A中学が誕生する事になるのだが

当時、台東区の公立の中では文武のほまれ高く、区内はもとより他学区からの越境入学者も多かったA中学にイゴちゃんも入学していたのだった


そうそう
その後の彼らはというと

トシちゃん
帰宅部を選択し、家業である飲食店の手伝いをこなしつつ、店内にあるマンガ・雑誌をほぼ入荷と同時に読了する力技を披露

少しのとっぽさとマニアックさを兼ね備えた少年へと成長していく

チキ
顧問の新任マドンナ先生に惹かれ、当初入部予定だった野球部を一瞬でブッチ(笑)

超絶ハードでほとんど休み無し!になるとも知らずに、新設のバレー部に入部しセッターとして活躍

最後の夏の大会で台東区優勝の栄誉を勝ち取ることとなる


そして
本編の主人公であるイゴちゃんはと言うと‥

中学1〜2年時は存在しておらず、中3時に新設された柔道部に加入(顧問の先生は元オリンピック強化選手)

この部は屈強な修羅‥もとい生徒を集め急ごしらえで誕生した、謂わば【超党派】スタイル

雉も鳴かずば撃たれまい‥‥
鳴いてた雉よ、いま何処…

そこには
かつてコユキヤで16ビットの限界の末に散り、羞恥心と怒りが織りなすピンクに染まっていた姿はなく、羅刹が如く奮戦するイゴちゃんの姿があった

そして。
最後の夏の大会で東京都大会ベスト16という偉業を達成する立役者となったのである


浅草千束・冬の陣 終劇
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エピローグ

令和の御代は壮年期を迎え各分野で活躍しているであろう、島本で時を習いしS53世代の金・銀・銅の聖闘士たち


雷門の2軒隣で店を構える観光客にも常連にも人気店で、大人になったチキも通っている大正11年創業【浅草ときわ食堂
聖衣名・ときわの牧こと、4代目社長もかつての白銀聖闘士(4教科2特)の一人だ

島本の聖闘士‥‥もとい仲間達とまだ残っている駒形校舎前で集結し、思い出を肴に【ときわ】で一献やりたいな〜

と、
駄菓子屋研究家へとクロスチェンジした、これまたかつての白銀聖闘士(4教科2特)のチキ(聖衣名・段ボール座のチキ)の抱きしめた心の小宇宙(コスモ)を汲み取りつつ、【浅草ときわ食堂】は今日も元気に営業中である!

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