2020年10月。
東京都世田谷区・用賀の駄菓子屋『まるきや』さん。
閉店されてしまいました・・・と。常連の方から連絡を頂きました。

シャッターが開いていれば開店のサイン。
家の中と外をつなぐ、靴で入れる土間空間を見事な駄菓子ワールドとして展開。

店主であるおばちゃん。
とても優しく温かで、子供達と信頼関係を結ばれていましたね・・・・

当て物系の駄菓子で『当たり』が出た際に、直ぐに交換ではなく、『まるきや』に保管できる『当たりサイン』制度を導入しており、子供達は安心しておばちゃんに預け、おばちゃんも子供に言われたら直ぐに交換してくれ、まさに信用金庫の様な存在でした。

「体が動くうちは駄菓子屋を続けていきたい」と、腹ペコ小学生達を見ながら話されていた御姿が懐かしいです・・・

おばちゃん。
お疲れ様でした。
そして、本当にありがとうございました。

以下・過去記事(2018年11月)

東京都世田谷区。

しもきた(下北沢)・さんちゃ(三軒茶屋)・にこたま(二子玉川)などの全国的な知名度をもつ複数のセレブタウンを擁する区域の面積は23区でNO2(58.08㎢)・・・でも悲しむ勿れ。
トップの大田区(60.4㎢)から埋め立て部分が多い羽田空港を抜いたら、ブッチギリのNO1に返り咲くから!(参照・東京23区の面積ランキング

JRと地下鉄が両方走っていない東京23区唯一の区ながら、都心へ乗り入れる東京急行電鉄小田急電鉄京王電鉄の私鉄3路線や、環七・環八の東京2大環状道路+中央フリーウェイと悠々流れる多摩川とが交差、都心へ郊外へ共にアクセス良好!

並の政令指定都市を凌駕する、23区ブッチギリNO1の人口約90万を誇るハイソな街。
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(東急田園都市線・用賀駅の風景。ハイソとノスタルジックの狭間なり!)

今回は、オシャレな町としても知られている東急田園都市線の用賀駅周辺が舞台です!

太平洋戦争開戦前夜の昭和15年(1940年)創業の老舗。

以来70有余年・・・
町の移り変わりを温かな目で見つめ続けてきた駄菓子屋「まるきや」をご紹介します。
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(シャッターが空いて入れば開店の印!いざ、店内へ!)
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(シャッターをのぞけば、中は素敵な土間空間が!ワクワクとまらん!)

シャッターをくぐると、土間のとても良い香りと、無数の駄菓子・駄玩具類が出迎えてくれる素敵な空間が広がっています!

「こんにちは~」とあいさつをすると、「あら。いらっしゃい!」と優しそうな微笑みを浮かべながら出て来てくれたおばちゃん。
「まるきや」の2代目にあたります。

「昔はこの辺りには、何軒も駄菓子屋があったんですよ。マンションもこんなになかったしね。今は駄菓子屋はうちの他にはほとんど無くなっちゃいましたね・・・」

悲しい事に少なくなってしまった用賀周辺の駄菓子屋事情から始まり、子供達の趣向・遊びの変化、売れ筋の駄菓子の事など、多岐に渡りおばちゃんに教えてもらいました。

そして、話を聞きながら駄菓子を選んでいる最中にある事に気付いた次第です。

それは。
入り口付近、一段低い机に置かれている駄菓子達の存在。
背丈の小さな子供達でも取りやすい様にと、おばちゃんの細やかな配慮がとても良く分かりますね!
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(子供の背丈に合わせて低い位置に配備される駄菓子。温かいご配慮なり!)

「おばちゃん!この前の『当たりサイン』いくらだっけ~??」

元気よく、そして不意に、そんな言葉を発しながら入ってきた少年グループの中の一人の言葉に、筆者は「当たりサインって、何じゃらホイ??」と、一瞬固まってしまいました(笑)

実はこの当たりサイン、「まるきや」と常連の子供達の間で代々伝わる不文律な伝統なのです。

お腹があまり減ってない時・・・
高額商品GETの準備金に・・・

アタリがでたその日じゃなくても、当たり券に自分の名前を書いておばちゃんに預ければ、いつでも引き出し可能!管理は安心安全のおばちゃん銀行!

「まだ近所に数軒駄菓子屋があった時とか、他のお店に迷惑かけない様(当たり券を他の店で使うなど)にやりはじめたの。原則、ここで開かないと無効だし(笑)。」

笑いながら説明してくれたおばちゃんと、不気味なオッサン(筆者)の質問を不思議な顔で見つめる少年達。

子供達はおばちゃんに名前を覚えてもらう過程の中で、安心して財産を預けて家路に着く・・・
これ、信頼関係が構築されてないと中々できない事ですよね。素晴しい!!
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(ジュースに安定の駄玩具・シール類。見てるだけで1枚引きたくなるでしょ!)
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(絶大な人気を誇るイタリア色のペペロンチーノ。お湯加減しだいでラーメンにもなるぞ!)

「何度か店を閉めようかと思いましたが。『やめないでね、おばちゃん』って念を押す子もいるし(笑)、孫連れて来てくれる常連さんや、帰ってくる(実家に)際に自分達の子供連れて来て『変わってないな~。まだ続けてくれるんでしょ!』なんて言う子達もいるから(笑)」

柔らかい笑顔を浮かべ、体が続く限りは店を続けていきたい気持ちを話してくれたおばちゃん。

少年の一団が店を去って行った後、おばちゃんにお礼を言って店を去ろうとした際に、また別の少年の集団が吸い寄せられるように「まるきや」に入っていきます。

「おばちゃ~ん。僕のサイン残ってる~??」

そんな声が後ろから聞こえた気がした「まるきや」訪問記でした!